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New Clear Power / WEAPON UK
失恋船長 ★★★ (2025-09-30 09:23:42)
再結成以降は同名異バンドがいたために、混乱を避けるためなのか、権利の関係なのかは分からないのだが、WEAPON.UKと名乗り活動を行っていた老舗英国メタルバンド。今作にはジェフ・サマーズというブレインはいないのだが、フロントマンのダニー・ハインズが残り金看板を守る形となっている。前作とか聞いていないので比較はできないのだが、今作における洗練されたスタイル。初期の頃からもっていた荒くれスタイルと、現代的なフィルターを通した正統派スタイルの融合。
これはSAXONにも通ずるやり方で、ややおとなしめのオープニングナンバーの次にくる②などを聴けば顕著だろう。Set The Stage AlightというNWOBHM史に残る楽曲があり、素晴らしいアルバムのアイデアを持っていながら、その宝箱は開かれることなくゴミの山でと埋もれた過去、その悲劇的な運命を自ら切り開くように再結成したのだが、順風満帆ではなかったろう。しかし、今作のタイトルに込められた思い、スマートな音像だ、メロディアスだがギターソロは熱い、昔気質の黄金比を堅守するメジャーメタル式方法論。
4曲目に登場するIn For The Killあたりでノックアウトです。新しい武器を手に入れたバンド。多くのアーティストが原点回帰を行い終焉に向かう。このバンドの同様にキャリア的には最終コーナーを回ったろう。こういう外連味のない作風を叩きつけることは間違いではない。ソングライターチームの助力もあるのだろう。バラードの入り方も計算されている。
なくても良かったが大衆性を感がると必要だ。
ラストはSAMSONがやった曲でラス・バラードのRiding with the Angelsで幕が閉じるという構成にいろんな思いと含んでいるように感じるのだが、そういう深読みはやめて音そのものを楽しみたい。
このアルバムがメタルの世界を変えることはない。もはやアメリカのスタンダードなヘヴィロックやハードサウンドにとって、このようなバンドが入り込む余地はない。あまりにも現代的なスタイルと乖離している。
しかしただ、古めかしいだけではない再構築。往年の空気を纏う荒くれリフ、この伝統芸とそれを堅守するタイトなリズム。もっとダイナミックなサウンドで聴きたいのだが、予算の関係はいかんともしがたい。テクノロジーの恩恵を受けたサウンドが逆に無駄な装飾をぞぎ落とし、タイムリープした感覚を覚える。あの時代のバンドが現代に蘇った。素直にそう評価できるだろう。彼らの代表作が幻の1stの再発掘で終わらなくて良かった。
今作もまた、NWOBHMの歴史に名を刻んだ男たちの気概に満ち溢れている。やはり近年のSAXON的な成功例を踏襲しているのだろう。餅は餅屋。顔ぶれは変わろうともバンドの精神性に揺ぎ無し、フレッシュな感性の導入。これだけ硬質なリフとリズムを持ち込めれば十分にNWOTHMマニアを楽しませられる。
クオリティの均一化ほど難しものはない。見事でしたね。
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